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コラム・弁護士

 
   

あなたの背中にいる恐竜

清水 淳子

2025年12月

弁護士 ・ 清水 淳子 先日めずらしくアタマが痛くなったシミズは、お医者さんに行って診てもらいました。
内科と整形外科をやっている先生は、シミズのアタマのレントゲンを撮り、「ストレートネックだね」と頭痛とどう関係があるのか分からない診断を下しました。そしてシミズの首根っこをガシッとつかむと、「やっぱり、すごい肩こりだ」と、シミズが初めて聞く衝撃の新事実をサラッと告げたのです。
|||||||( T∇T) T∇T) T∇T)|||||||ガーン
これまで「肩こりがひどくって…」とぼやく友人らを、「へー、大変だなー」「治らないものなのかな」「気の毒に…」と200%他人事と思って眺めていた自分が、まさかの「すごい肩こり」だったなんて…。ニンゲンだったら軽くカーブしているはずのクビがまっすぐなため、肩がこると説明してくれました。外国には「肩こり」にあたる言葉がないので、外国人に肩こりの人はいない、なんてホントかウソか分からない通説がありますが、「肩こり」という言葉も症状も知ってて、自覚がないヤツもいるんですね。
どうも!隠れ肩こり、シミズです。
ちなみにその後肩のマッサージを何回か受けたら頭痛が治ったので、肩こりの治療はしておりません。

 

アナタは自分の首のレントゲンを見たことがあるだろうか?健康診断で撮るのは胸を正面から撮ったものなので、あまりクビを横から撮るレントゲンは見たことがないかもしれない。
(日本整形外科学会より)
上に頭蓋骨が載ってるし、「ヒトのクビ」というのはお分かりいただけるだろう。左が前で右が後ろだ。
頸椎という「だるまおとし」みたいな骨が縦に並んでいて、これがズレたり詰まったりするといろいろ痛くなるようだ。知らんけど。
ところでこのダルマをよく見てほしい。いちいちしっぽのような骨が後方に伸びているだろう。これ、棘突起−キョクトッキ―というそうな。
ジーっと見ていると恐竜の背びれにそっくり。ステゴサウルスとかディメトロドンとかスピノサウルスみたいな。
ステゴサウルス(Wikibooksより)なんの役に立つのかさっぱり分からない背びれ

 

棘突起(キョクトッキ)と聞くと、つい兀突骨(ゴツトツコツ)、諸葛亮孔明に戦いを挑んで負けて恭順したタイとかベトナムに近いところの王様を思い出す。
捕まっては「バカヤロー、誰がお前なんかに従うか!」(兀突骨)と悪態をついて、「ほっほっほ、従わないというなら仕方がない」(諸葛亮孔明)と解き放たれ、またケンカを売っては捕まって…というキャッチ&リリースを7回繰り返した三国志の中でもひときわバカっぽくて好きなキャラクターだ。

 

ゴツトツコツはさておき、背骨の外側に張り出したキョクトッキ、後ろに伸びた不思議な骨はヒトの祖先が恐竜だった[1]ことを想起させる。
「祖先は恐竜」
なんとロマンチックな!
ま、ホントは親戚関係も何もない赤の他人なんだけど、なんか似てるじゃないか。
ちょっと調べてみたところ、キョクトッキはステゴサウルスの背中のビラビラの名残でもディメトロドンの背中の帆の名残でもなくて、役目があってついているらしい。背中側の筋肉、つまり背筋を体の真ん中につなぎとめておくための係船柱(けいせんちゅう。小林旭さんが波止場で足を乗せてたアレね)になっているそうだ。
役割を聞けばアタリマエのことだが、背中の筋肉が発達している動物は棘突起が長くて、背中の筋肉がぬるい動物は短い。キリンやアメリカバイソンなんかは背中側の筋肉が発達しているので、棘突起が長め、ネズミなんかは背中の筋肉を使う動きをしないためか棘突起は短めだ。
キリン(Wikipediaより)
ネズミ(福井自然史博物館より)

 

ヒトはアタマが重いためか、キリンほどではないが棘突起は長めのようだ。

 

シミズの棘突起はヒトとして長めか短めか、どうしても恐竜のビラビラの名残と思うシミズは、すごく気になる。
どうせなら平均より長くありたい。長い方が生物としてワイルドじゃないか。
そしてシミズは、自分の棘突起の長さも知らずに、ヒトの棘突起の長さの平均をググった。
なかった。
グーグル先生、たいていのことは即座に答えてくれるのに、「ヒトの棘突起の長さは2ミリから20ミリ」と答えてくれたが、一番長い第7頸椎の棘突起の日本人平均が何ミリかは答えてくれなかった。ニンゲンの平均でもいい。知りたい。
年を取ると長くなるのか、短くなるのか、一定年齢からずっと変わらないのか。
「…ンガァァァーーー!」と叫びながら日々僧帽筋や広背筋を鍛えているマッチョは長いのか。
「棘突起が長いと転びにくい」とか、誰か研究してランセットに発表してくれないか。
「バナナを毎朝食べると棘突起が伸びる」とかテレビ番組でやってくれないか。
この恐竜の名残、小林旭のアレ、がニンゲンの体にどういう影響を与えているのか、どうにも気になって仕方がない。

 

そのうち、ひざの軟骨成分とか、アタマのDHA並みにキョクトッキがメジャーになったあかつきには、健康診断のメニューにキョクトッキの計測が入るに違いない。
あぁ、いつか「なかなか見事な棘突起ですね」とか言われてみたいシミズであった。

 

 

脚注
1.ウソだよ。恐竜の祖先は爬虫類でヒトの祖先は哺乳類。
お互いの祖先が交わっているのは古生代で、両生類までさかのぼります。
良い子のみんなは学校で「ヒトの祖先は恐竜だったんだぜ」なんて自慢しちゃダメだよー。

 

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