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コラム・弁護士

 
   

憲法24条の現在地

後藤 富士子

2026年3月

弁護士 ・ 後藤 富士子

1.「身分」から「契約」へ

明治民法における家族法の特色は、封建的家父長家族制度の確保という点にあると言われるが、むしろイデオロギー的に天皇制家族国家の基礎を果たすのが「家」であった。「家」は戸籍上の存在にすぎず、現実における家族的共同生活団体そのものではないけれども、戸主により統率される家族集団を想定していたので、封建的家父長家族を温存・強化する作用を営んだという。家族内部における成員の統制権は男系の家長に集中体現され、成員関係は、平等な家族員としての横の関係よりも、親と子、長男と次三男、男と女、すべてにわたって身分上の縦の関係としてだけ意味をもっていた。

これに対し、敗戦後の民主化の根本要請として日本国憲法が制定され、民法の身分法改正の根本精神を明らかにしたのが憲法24条である。また、これに関連する条文として、個人の尊厳を規定した13条と国民の平等を規定した14条がある。ここでは一夫一婦制の婚姻家族が基礎となり、婚姻の自由、妻の無能力制の廃止、男女同権、父権の弱化、親子の平等、均分相続など、革命的な転換が図られている。明治民法の規定する家族制度の中枢をなすものとされた、「家」・戸主権・家督相続の3つは廃止された。

 

憲法24条1項は、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」と定めている。

 

ここには、婚姻にまつわる「身分」関係が入り込む余地がない。私が司法試験の勉強を始めた半世紀余前の書物には、これについて〈身分から契約へ〉と表現されていた。確かに、合意のみに基づいて成立するなら、それは「契約」というほかない。

 

2.「戸籍筆頭者」のための「夫婦同姓」

民法750条は、結婚の際に「夫または妻の氏を称する」として「夫婦同姓」を義務づけている。「夫婦の氏」が「夫の氏」である必要はなく、その意味では「性に中立」といえる。しかし、2024年時点で、結婚時に約94%の妻が夫の氏に改姓している。この偏りはあまりにも酷く、「旧姓を失う」「改姓の手間」など不利益の実情を鑑みると、「夫婦が同等の権利を有する」と定めた憲法24条1項に明らかに反している。

あまりにも長い年月を経ながら、なぜ未だに妻の改姓が94%なのか?「選択的夫婦別姓」が唱導されてからも30年経っている。

これを追及すると、「戸籍筆頭者」にたどりつく。「家」制度が廃止され、「戸主」という存在もなくなった。しかし、戸籍制度は形を変えて残り、「核家族」単位で編製されることになった(戸籍法17条「三代戸籍禁止」の原則)。ごく一般的なのは、夫婦のどちらかが戸籍筆頭者となり、その筆頭者の氏で統一された夫婦と子どもが「一つの家族」になる(戸籍法6条「同氏同籍」の原則)。すなわち、「夫婦同姓」の義務づけは、戸籍上の「家族」の筆頭者を決めるためだったのだ。

しかし、これでは本末転倒であり、結婚時に改姓しなくてもよいのが基本とされるべきである。とはいえ、「家族」が同一の氏を称したいというのも、自然である。したがって、「夫婦同姓」を選択できるようにするのが最善であろう。その制度にしても、「夫婦同姓」を選択するカップルが多数派ではないかと思われるし、その場合に妻が夫の氏に改姓する割合もかなり高いかもしれない。でも、それは、法律で義務づけられた結果ではなく、当事者が自主的に選択した結果であるから、国民の主体性が涵養される。

 

3.「象徴天皇制」と「男女同権」

高市政権は、「選択的夫婦別姓」案を葬り、「旧姓の通称使用」を法制化する方針である。

しかし、皮肉なことに、「保守右翼」と言われる高市早苗さん自身が、この問題の当事者なのだ。高市早苗さんは、山本拓さんと結婚し、戸籍姓は「山本」になった。そして、総務大臣時代には旧姓「高市」の併記を推進してきたのに、自民党の総裁選に出馬するにあたり、離婚して「旧姓使用」をやめ、夫を改姓させて再婚したという。だから、現在は山本拓さんが「旧姓使用」です。このような夫婦の履歴に照らせば、「夫婦同姓を選択制にする」制度が一番ぴったりなのではないだろうか?

ところで、私は以前から、「保守右翼」と言われる人がなぜ「選択的夫婦別姓」にアレルギーのような反発をするのか理解できなかった。しかし、明治民法の「家」が、イデオロギー的に天皇制家族国家の基礎を果たすものであり、だからこそその廃止について激しい抵抗があり、戸籍制度などによって底流で引き継がれてきたことを理解した。高市政権は、同時に皇室典範改正にも言及しており、「男系男子」に拘っている。さらに、憲法24条の改正も俎上に上げている。まさに、戦前回帰型の「保守右翼」である。

しかしながら、日本国憲法の天皇制は、明治憲法の絶対権力的天皇制とは連続していない。憲法1条は「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。」と定めている。また、憲法99条で「憲法尊重擁護の義務」を天皇や摂政も課されている。そして、憲法98条1項で最高規範性が規定され、憲法に反する詔勅も無効とされる。これが「象徴天皇制」である。これに相応しい天皇家や皇室のあり方を考えれば、「男系男子」が出てくるはずはないのではないか。

高市早苗さんは、日本で初めて女性の総理大臣になった。それを実現させたのは、日本国憲法24条によるところが大きい。この条文は、ベアテ・シロタ・ゴードンさんから日本女性への贈り物である。それを足蹴にするなんて、日本女性が許すことはあり得ない。

 

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