インクも凍る! 極寒の信州松本支部探検 その3 |
鈴木 周 |
2016年7月 |
さて早速庁舎内を探検しようと思ったら、午後1時過ぎでは無理もないが、隊員たちが「腹減った」「なんか食わせろ」「ラーメンどうした」等、ピーチクパーチクうるさいので、安藤氏に「この辺りで先生方がよく入るお店はどこですか。」と聞いたところ、裁判所裏手100mほど行ったところにある、蕎麦どころ「もとき」に案内してくれた。ご多分に漏れず、山国である松本の名物と言ったらお蕎麦だそうで、あとは信州味噌や野沢菜等が名産品で、武田の支配下からは少し離れるので「ほうとう」はなく、もう少し北に行った長野市はむしろ日本海側との親和性が高いということであった。
お蕎麦を待つ間、支部のことについて安藤氏と宮坂氏からいろいろお聞きしたところ、やはり想像はしていたのが、「長野県は大変に広いために、移動が大変で、どの弁護士も車で動いている。」「松本支部を中心に仕事をしている弁護士は大体50名位いるが、たいてい市の中心部から外に事務所を構えている。」「県内の弁護士は、お互い遠く離れているので、委員会なども常にテレビ会議であり、親しいが会ったことのない委員も沢山いる。」「当番や被疑者国選は特に大変で、留置される警察署が飯田や諏訪だったりすると、接見するのに車で1〜2時間もかかるし、犯行地が別だとさらに時間がかかる。」「裁判所の管轄の問題もあり、例えば以前は労働審判が本庁でしか出来なかったのだが、分離独立運動の結果、めでたく松本でも出来るようになった。」とのことで、県土の広さがそのまま仕事の特性にもつながっていると感じた。
また、これも薄々想像はしていたのであるが、「長野市と松本市とは約100km離れており、その間に険峻な山地が横たわっているので、文化的に癒合せず、昔からライバル心が強い。」「『長野』と言えば、長野市民以外の県民は『長野市』のことであると考えており、県全体のことは『長野県』『信州』と呼ばないと、腹までは立てないが、違和感アリアリである。」「長野市には県庁があるが(当然のような気がするが…)、松本市に信州大学本部があったり日銀支店があるなど、一極集中をさせないようにして、松本市民のガス抜きをしているように思われる。」「もともと松本にも県庁の予定地があったのだが(一体なんでだろう…)、火事で焼けてしまったために、長野市に県庁がおかれたというオカルト話がある。」「対抗心は弁護士会にもあり、弁護士会の『支部』を作ることは長野の傘下に置かれるということで抵抗感があるため、『在住会』という独自の任意団体を設け、これが実質的に支部の機能を果たしている。」「松本に限らず在住会はどこも独立採算でやっており、会員は弁護士会費のほか在住会費の支払もあるので、松本では総額で一人月額約7万円も払っている。」ということであった(丸カッコ内鈴木記載)。
もときのお蕎麦は、更科ふうの白くて細いお蕎麦で、適度に歯ごたえがあり、大変上品な味と香りであった。上品だが、ざるそばは二段がデフォルトで、ボリュームも満点の良心店なのであった(金額は忘れました。すんません。)。お汁が少ーし甘いかなー、という気がしないでもなかったが、そこは好みの問題であろう。と、そうしているうちに、上下アノラック着用の大輔隊員が追い付いて皆に平謝りし、笑って許してあげた後、「これで全員揃ったな」ということで、お店を出て裁判所見学に向かった。
裁判所にはすぐ着き、表で記念撮影をした後に、庁舎内を探検した。庁舎は大変綺麗で、新品かと思ったが、阿曽山氏が「10年前に来たときもこうだった。」というので、「だとすると、丁寧に手入れして使っているのだな。」と思った。3階建のうち、2階が書記官室、裁判官室、調停室で、3階は法廷と弁護士控室となっていた。やはり地下食というか地下自体がなかったのは残念であった。皆車でどこでも行けるため、仕事場近辺で食事をする必要性自体がないのだろう。
事前の情報で、この日は刑事の期日も民事の尋問も行われていないことは分かってはいたのだが、なんと民事の弁論すらなく(1時30分で終り)、「これは参ったね。法廷の中も見られないのか。しょうがないから3階の弁護士控室を見てこう。」ということで、エレベーターで3階に上がってみた。そうしたら、3階にはラウンド法廷が並んでおり、中で何事か話合いが行われていた様子だったので、窓をパカっと開いて覗いてみたところ、「なんですかアナタ。公開じゃないからダメです。」と追い払われてしまった。家事審判かなんかだったのだろうか。
そして、皆で、本日唯一の見どころである、弁護士控室に入ったところ、「暑っ! 何これ?」と一同ビックリした。寒い松本に来訪した弁護士を慮っているのか、暖房がエライ勢いでたかれており、真夏のような室温となっていたのであった。体感的には30度位の感覚であった。「こりゃ無駄だね。勿体ない。」ということでスイッチを弱にし、改めて見渡してみると、10畳程度の室内には12~3人は入れそうであり、起案やメールチェックなども快適にできそうな部屋であった。阿曽山氏によると、「南の端にある部屋では、窓から松本城が一望出来て、大変眺めがよい。」とのことであり、法廷に入れないのがつくづく残念であった。
ちなみに、売店は、1階の入口を入ったところに仮店舗(2m四方位のボックスで、印紙や切手を売っている。)があり、郵便局まで歩かなくても購入できる。ボックス内は誰もいなそうだったので、「こんな弁論も何もない日じゃ、商売あがったりだもんな。つらい仕事だ。」とか言いながら正面に回ったら、売り場のオジサンと目があってしまい、「失礼しました。」とソソクサと離れたのだった。
一同、「うん、不十分だが裁判所がどんなものか一応理解できた。それじゃ、次に行こう。」ということで、次は裁判所から徒歩2分ほどのところにある、松本在住弁護士会渾身の一作、松本在住会館を見学することとなった。
【以下次号】 |