時代劇が好きだ。最後まで見て「何だったんだ?この話は?」とモヤモヤが残る最近のドラマより、一話完結、悪代官や非情な盗賊が懲らしめられて終わりの「○×侍」とか「○×帳」とか「○×記」みたいなものを見ることが多い。
そうすると、厳格な父親がバカ息子が人殺ししたと思って罪を名乗り出たり、無口で怒りっぽいおとっつぁんが、実はおっかさんが死んでからずっと娘の嫁入りのためにお金をためていたり、子供のころ養子に出した息子のことを飯屋の女将として見守ってきたり、貧しいお爺さんおばあさんの家の軒先にそっと木の実を置いていったり(ごんぎつねか)、そんな本人にはあえて知らせないけれど、陰から守ってきたんだよ、という「いい話」がちりばめられていることがよくある。
武士は食わねど高楊枝的な美学とでもいうのか、言わぬが花とでもいうのか。
こんなお話が添えられると途端に涙腺が緩んで
ズッビ―――――――――――(* ̄ii ̄)とハナ水がたれてしまう。
チーン!←これハナをかむ音。
こんな「いい話」に弱いシミズだが、仕事のうえで依頼者にこれをされると別の意味で泣けてくる。
- 殺人罪で逮捕されてますが、実はやったのは息子です。(犯人隠避罪ですね。親族なので免除されるかと思いますが、先に言ってくださいよ。)
- 絶縁状態の娘のために貯金をしているんです。(下手すると贈与税や相続税がかかりますねぇ。今から110万円ずつ渡しておきましょうよ。)
- 子どものころ養子に出した息子が気になって、学校の売店で働いてるんです。(あとをつけてストーカー呼ばわりされないように注意してくださいね。息子さんにだけ焼きそばパンあげてえこひいきするのもダメですよ。)
- 自動車事故に遭って車の修理代を請求しているけれど、実は今でも右腕がしびれて上がりません。(それは後遺症ですよ。慰謝料請求できるんだから、診断書取りましょう。)
- だんなと離婚して財産分与を求めているのだけれど、実はまだ小学校・保育園の子供が3人います。(財産分与も大事だけど、子供の養育費も大きいですよ。請求しましょう。)
- 小さい会社だけど一代で築いた大事な会社です。やる気のない息子じゃなくて、若いころから頑張って一緒に今の会社を作った専務に継いでもらいたいと思ってるんです。(何もしないと持株全部息子さんが相続して会社の存続も危ういですよ。ちゃんと事業承継の計画を立てないとだめです。)
- 亡くなったお父さん、よそに隠し子がいて、大学を出して就職まで世話していたんですよ。(いい話かどうかの評価はさておき、お父さんはその子を認知していましたか?もし認知していなかったら認知請求される可能性が高いので、遺産分割はちょっと保留にしましょう。)
実際はこんな分かりやすい話ばかりではないが、「こんなことまで弁護士に聞かせるのは…。」と遠慮してか、実は大事な話が知らされていない、ということはままある。そんな時は、自分の質問の下手さを棚に上げて、「先に言ってよー(涙)」と思ってしまうのだ。
皆さんも弁護士に相談したときは、「これは関係ない話だし…。」などと遠慮せず、なんでも言うだけ言ってくださいね。「そうですかー、気の毒に…。」と、からきし役に立たないこともありますが、意外な解決の知恵を持っていることもあります。
言わぬが花、ではなく「言うが花」です。
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