雨が降ったらラーメンを食べよう |
清水 淳子 |
2017年7月 |
梅雨が明けたか明けてないか分からないが(確定するのは9月頃だとか。そんなころに「今年の梅雨は7月10日に明けてました。」と宣言されて何かの役に立つのだろうか)、とにかく連日の猛暑と合間をぬってやってくるゲリラ豪雨でもううんざり、という感じだ。
最近でこそ「降れば土砂降り」だが、私が子供のころは大雨と言っても今の「やや強い雨」くらいなもので、近所で遊ぶ分には走って家まで帰っても頭と肩が濡れるくらいで、遠出しない限り濡れネズミになることはあまりなかった。今の豪雨だと、一瞬でパンツまでビショビショになること確実である。
さて、子供のころの外遊びと言えば、刑ドロ(地域によってはドロ刑だとか)や、鬼ごっこ、草野球、チャリで遠出…あぁ、もう何をしてたのかさっぱり思い出せない。まあ適当に、何が楽しいのか、もとい、何か楽しいことを見つけて遊んでいたわけだ。
そんな手のかからない子供たちでも、雨が降るとそれなりに活動範囲が制限されて、途端に退屈する。
小学校高学年くらいになると、りぼんだのなかよしだのとマンガ雑誌を買うようになって、家の中でもそれなりに時間をつぶせるようになるが、低学年だとマンガを買えるほどお小遣いはもらっていないし、少女マンガよりはじめ人間ギャートルズのほうがはるかに面白く、家遊びのネタはほとんどなかったように思う。
そんな低学年ギャングたちは、梅雨時になると、アパートの軒先をかけ回って(迷惑な…)鬼ごっこをするくらいで、お茶を濁すことになる。
ある雨の日、例によって持て余したチビギャングは、仲間のギャング(仮に「みーちゃん」と呼ぼう)と連れ立って、近所の家々をパトロールして回った。(みーちゃんはどういうわけか近所の老若男女に顔が広かった)そして、パトロールがとあるアパートに及んだ際、窓から中をのぞきこんだみーちゃんは、知り合いのおっちゃん(仮に「おっちゃん」と呼ぼう…ってそのままやん)がひとり酒盛りをしているところを発見した。おっちゃんはたぶん工事関係の仕事をしている人で、雨の日は仕事がなかったのだと思う。それで家でひとり酒盛りをしていたのだろう。
「おっちゃん、何してるの?」
「カニ買ってきてこれから食べるんだ。みーちゃんも食べるか?」
「食べる食べる♪」
そう、その日のおっちゃんの肴はカニだった!!!!!
みーちゃんは顔が広いだけでなく、嗅覚も優れていたのだ。
おっちゃんはひとり酒の余興とばかり、チビどもを歓迎してくれた(ように見えた)。チビどもはスナックのママさんみたいにしゃれた会話ができるはずもなく、目の色を変えてカニ足にかぶりつくだけだ。なのに、おっちゃんは文句を言うこともなく(本当は何かしら嫌味を言っていたかもしれないが、まったく覚えていない)、ほんの1〜2本口にしただけで(本当はもうちょっと食べてたかもしれないし、全然食べてないかもしれないが、いずれにせよまったく見ていない)、ほとんどしゃべらず(本当はしゃべっていたかもしれないが、カニに夢中で聞いちゃいない)、寡黙に酒を口に運んでいた(飲んでた、は本当)。
そして、カニを食べつくすと、カニの切れ目が縁の切れ目と言わんばかり、おっちゃんの酒盛りなど知らんぷりで去って行ったのであった。子供って残酷…(;^□^)
そして雨の夕暮れ時、カニの残骸を前にひとり酒を飲むことになったおっちゃん。何か別のおつまみはあったのだろうか?今思えば(その当時も「悪いことしたなー」とは思ったさ)なんとも気の毒なことをしたものだ。
教訓: 雨の日にはカニじゃなくてインスタントラーメンくらいにしておいたほうが安全だ |