今年のゴールデンウィークは、メキシコ発新型インフルエンザが勃発し、世界規模で流行する「パンデミック」状態になるかとまで危ぶまれ、近所のスーパーに行くにもミョーな緊張感を覚えるとてもスリリングな連休であった。
さてインフルエンザ―――流行性感冒、流感、単に縮めて「インフル」などとも呼ばれている風邪の一種である。ただ「風邪」というと、「よく食べて寝てりゃ治る」と思われがちで、そんな世間の甘い認識が許せないのか他に深ーい理由があるのか、「インフルエンザは風邪じゃない!」と力説する医師も多い(同じウィルス感染なのに、何で違うんだろう?)。
インフルエンザの症状は、急な発熱(しかも高熱)、頭痛、筋肉痛、下痢、嘔吐、咳や鼻水も出たりする。しかも感染力が強いせいで、一人発症するとたちどころに蔓延して学校などではすぐに学級閉鎖に追い込まれる。体力がないところに発症すると肺炎になり、これで死亡する場合もある。さらにインフルエンザ脳症と言われる意識障害や神経障害を起こすこともある。「風邪のキョーレツなやつ」は「キョーレツに怖いやつ」でもあるのだ。
国内で使われる治療薬は、「タミフル」と「リレンザ」である。これらはインフルエンザ・ウィルスの活動を阻害し(やっつけるわけではなく、馬や具足を奪って兵糧攻めにする感じ)、何日かかけて体内から駆逐しようとするもので、早目に服用しなければ効果がないと言われている。そう、インフルエンザにかかったら「食べて寝てる」だけでは体内のウィルスをさらに増幅させる危険があり、1時間でも早く病院に行かなければならないのだ。
そう思って考えてみる。 いきなり熱が39度出てモウロウとしつつ、頭はガンガン痛み、身体を動かせばいちいち痛む、食べれば吐きそうだしお腹も緩くてもうふらふらだ〜、というときに、病院に行けるか?
マスクをして、スウェットのうえにハンテンをはおり、おでこには冷えピタを貼って家を出てタクシーを拾う。 「あの、すみません○×病院までお願いします。ゴホゴホ」 「風邪なら隣町の△△病院でもいいんじゃない?何で○×病院なの?」 「いえ、この辺の感染症指定病院が○×病院なので…。ケホケホ」 「…ちょっと待った!するってぇと何かい?あんたインフルエンザにかかってるってことかい? 降りてくんな。インフルエンザ野郎に座らせるシートは1センチたりともないんだよ。さぁ、とっとと降りてくれ!」 と言われるかどうかは別として、次々乗車拒否にあって、なかなか出発できない。ようやく乗せてくれたタクシーで30分。ほとんど倒れそうになりながら受付をする。
「発熱・頭痛・筋肉痛でインフルエンザじゃないかと思うんですが…」 「インフルエンザの患者さんはここではなく、別館で受付しています。こう行ってああ行って、ここを曲がって、そこを上って、ここになります。」 「遠いんですか?」 「いいえー(満面の営業スマイル)、すぐですよー(それより早く私の前からいなくなってちょうだい的オーラ)。」 受付嬢に迷惑をかけてもと思い、がんばって感染症受付に向かうことにする。
道に迷いつつ5分かかって感染症受付に着くと、そこにはうらぶれムード満載の感染症病棟が…
このあたりまで想像したら萎えた。完全に萎えた。そうまでして病院に行かなければならないのか?
きっと本当にかかったら、高熱で判断力が低下しているし、 「かような憂き目にあうくらいなら、ワシは一歩も引かぬ。最後まで正々堂々とインフルエンザ・ウィルスと戦ってやる。馬をひけ、馬をー。」 なんてことを言って布団にもぐるような気がする。いや、きっとそうする。 「城を枕に討ち死にじゃー。」 とも言うかもしれない。マズい。絶対にマズい。討ち死に一直線だ。全身にウィルスが充満して胞子のようにウィルスをまき散らす怪獣インフル星人になり、ウルトラマンに征伐されるまでもなく自爆だ。
結局「何が何でも感染しない」というのが最良最善の策なのだ。皆さんも怪獣インフル星人にならないよう、人ごみに行くときはマスクをして、うがい・手洗いをマメにして、予防を心がけましょうね。 |