1 法定相続分の非嫡出子差別
民法第900条4号の「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1」とする規定は、昭和55年の民法改正で妻の相続分が「3分の1」から「2分の1」に引き上げられたときにも、改正が見送られた。そして、「非嫡出子の法定相続分を差別することは、憲法第14条に違反する」とする下級審判決が続く中で、平成7年、最高裁大法廷は「法律婚を保護するための合理的差別」として合憲であると判示した。
2 母系相続を考えれば・・・
ケース・スタディのために、元祖「未婚の母」である桐島洋子さんに登場してもらおう。彼女は、同一の男性との間に3人の子をもうけながら、敢えて結婚しなかった。その後、彼女は別の男性と婚姻届出をし、2人の間に子は生まれていないが、仮に子が生まれたとする。そうすると、先に生まれた3人は非嫡出子であり、後から生まれた子は嫡出子であるから、桐島さんの遺産相続について差別が生じる。桐島さんにしてみると、4人とも自分の産んだ子であり、法律婚をしたり、しなかったりしたのも自分の選択だったのだから、自分の遺産に対して子の相続分に差が出るなど、合理的説明ができないであろう。この事例から明らかなように、「合理的差別」の根拠として持ち出される「法律婚の保護」は、母の遺産相続については全く合理性をもたない。
それでは、父の遺産相続についてなら合理性があるかといえば、そうでもない。例えば「正妻」に子がない(つまり嫡出子がいない)場合には、法定相続分は妻と非嫡出子と同じであり、特に「法律婚」が保護されるわけではない。父系相続においては、何よりも「家」の承継者である子が重要であり、そのためには単一婚主義(一夫一婦制)さえ二の次である。「世継」を産まない女は、たとえ「正妻」でも優遇されることはない。
3 世襲天皇制と世継
皇太子夫妻にも、秋篠宮夫妻にも、男の子がいない。皇室典範第1条は「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」と規定している。したがって、このままでいくと、現天皇の孫の世代で皇位を継承すべき者がいなくなる。そこで、にわかに湧き起こっているのが「女帝」論である。具体的には、皇太子の長女・敬宮愛子内親王が天皇になることができるように、皇室典範を改正するという議論である。
しかし、男系男子の世継を確保する方法がないではない。それは、単一婚主義をやめて、世継が生まれるまで何人でも妻をもてばいいのである。現に、世襲制の安泰のためには、そうしてきた歴史がある。とはいえ、世継のためだけに生殖行為をしなければならないというのは、全く非人間的である。
4 あるがままを肯定する法制度を
これらの事象を見ると、血統に基づく世代継承制度では、「法律婚主義」や「男系男子」などという枠をはめると、どうにもならなくなることがわかる。考えてみれば、法制度のために人間がいるのではない。人間の幸福のために法制度があるのである。したがって、生身の人間が生活する場において、特定の価値で枠を決めることに無理がある。重婚的内縁関係で生まれた非嫡出子も、子として差別することなく扱うべきである。皇位継承も男子に限らなければいい。あるがままを受け入れる、人間に優しい法制度であってほしいものである。 |