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コラム・弁護士

 
   

『小悪』と『巨悪』

穂積 剛

2005年11月

穂積 剛

今年の9月から10月にかけて、わが事務所に対する嫌がらせが頻発する事件がありました。誰かが私の名前をかたってピザの宅配や高級弁当などを次々と注文し、それが事務所に届けられるという事件があったのです。

弁当屋さんがお弁当を持ってきたり、花屋さんが花束を届けに来たり、ピアノの搬送会社がピアノの搬送の件で問合せしてきたり、お米屋さんがお米を運んできたり、ホテルに私の名前で宿泊予約を入れたり、産業廃棄物の処理を依頼したりと、よくまあこんなに思いつくなあとこちらが感心するぐらい、いろいろな注文や問合せが続きました。

これはおそらく、私が相手方として手がけていたいわゆる「ヤミ金業者」が仕掛けたことではないかと思います。

たぶん「ヤミ金」としては、私に対する「嫌がらせ」のつもりだったのでしょうが、実は私の方は痛くもかゆくもありません。頼んでいないものに対しては支払いもしないのですから、何をやってきてもこちらは事情を説明して断るだけです。本当の被害者は、このように騙されてしまう業者の方々でした。もっとも、ほとんどの場合には事前に確認電話が入っていましたから、実際の被害も生じないことが多かったのです。

ただ一度だけ、私の昼食が380円の立ち食いソバだったのに、届けられたお弁当が1500円もする高級品だったときがあり、このときは「ちくしょうめ」と思ったものです。しかしそれ以外のときには、「次は何をやってくれるんだろうな」と不謹慎にも内心楽しみにしていたものでした。その後、この嫌がらせはピタッと止まって来なくなりました。

弁護士にとっては、ヤミ金などというのはまったく怖いなどとは思わない存在です。むしろヤミ金の方が弁護士を恐れます。ヤミ金というのは、表に出ることもできない卑劣で卑怯な連中ですから、法的手段を行使できる弁護士というのは実は怖い存在なのです。そして、私はこのようなヤミ金には特に手加減も容赦もしませんから、彼らにとってはますます怖い存在だっただろうと思います。実際、あるヤミ金から「先生が一番怖い弁護士だ」と言われたこともありました。

このように、私にとっては「屁」のような存在でしかないヤミ金ですが、一般の方々にとっては怖い存在であるようです。特に、ヤミ金によって追い込みをかけられたことが原因と思われる債務者の自殺という事態に、この間二回も私は遭遇しました。そんなことになる前に、弁護士と相談できる機会があればよかったのにと心底悔やまれてなりません。

債務者を自殺に追いやったヤミ金は、確かに許し難い「悪」です。しかし弁護士と対峙するとコソコソ逃げ隠れするような連中は、実は「小悪」でしかありません。

こんなチンケで臆病な連中よりも、ずっと恐いのが「巨悪」です。「巨悪」の典型は、国家権力による犯罪でしょう。実際この国は、つい60年ほど前に国家権力の暴走を許してしまい、周辺諸国に惨憺たる甚大な被害を及ぼした挙げ句、自国も破滅の淵にまで追い詰められました。

あのときこの国は、集団で狂気と化してしまい、自由や人権、平等などといった概念は全て「売国的」であるとされ、国家に従属・奉仕せず一色に染まらない存在は「非国民」として社会的に抹殺されるという状態になりました。冷静な議論や沈着な判断力の必要性は忘れ去られ、国家の価値・社会全体の価値が個人の人権よりも上位にあるとして、個人の権利が侵害され内心の自由すら蹂躙された中で、この国は破滅の一歩手前にまで至ったのではなかったでしょうか。

ところが今また、個人の権利に対する侵害が国家や公共団体によって公然と行われようとしています。教育の現場では、日の丸・君が代に従属しなければ教師が処分されるという異常事態が次々と進行しています。しかももっと恐ろしいことに、その「異常さ」がこの社会において共有されていないのです。
また、政権与党が発表した憲法草案では、「国を愛せ」などということが堂々と規定され、個人の権利の保障よりも個人が「責任と義務」を負うべきことが強調されようとしています。これは、近代憲法の根本原理とは相容れない考え方です。

このような事態がこのまま進行していけば、またしてもこの国は周辺諸国に多大な損害を与えた末に破滅した同じ過ちを繰り返しかねません。こうした虞れこそが本当の意味でもっとも「恐ろしい」事態であり、多くの人の命を奪い権利を侵害することになる「巨悪」なのです。このような「巨悪」の前では、弁護士の力など微々たるものでしかありません。

もちろん私は、ヤミ金など許しません。その責任は、これまでどおり徹底的に追求していくつもりです。しかし、もっと恐ろしい「巨悪」をいかに克服していくか。そのことこそがもっとも重要な課題なのではないかと考えています。

 

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