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コラム・弁護士

 
   

関弁連寄稿「豪雪の長岡支部 銀風吹きすさぶ雪中行軍!」その3

鈴木 周

2014年7月

弁護士 ・ 鈴木 周

雪中行軍後、再び裁判所に戻り、皆で刑事法廷の303号に入った。検察官も弁護人も、突如、金髪スカートを含めた大傍聴団が登場したので、ギョっとなっている様子であった。書記官はベテランの女性で、我々に気が付くとツカツカと阿曽山氏に近づいてきたので、「ヘンなカッコの人は傍聴ダメよ。」とか言うのかと思ったら、「阿曽山さんですよね。東京で何度かお目にかかりました。お久しぶりです。」とのことであった。何年か前まで東京の刑事法廷におられたようだ。

法廷内は、暗くも明るくもない普通の木目調であったが、なぜか天井にイタメシ屋のような扇風機が5つ付いているのが印象的であった。夏場熱気がこもるなど、空気循環の必要があるのだろうか。その後、裁判官(女性)が入廷して開廷。事件は恐喝で、窃盗を働いた仲間に対して、それをネタに70万円を脅し取ろうとし、実際に10万円を交付させたというものであった。被告人は26歳の茶髪男で、5歳と1歳の子供がいる。前科前歴8犯、うち恐喝が3犯、少年院には2回入っている。現在は保護観察付の執行猶予期間中で、前回も恐喝、当然実刑確実の案件であった。冒陳によると、彼は風俗店で働いており月給25〜30万円を貰っていたが、パチンコやマージャンなどのギャンブル費用が足りず、執行猶予期間中にも関わらず、後輩を脅して金を巻き上げたということであった。弁護人はこの寒いのに五分刈りの若い弁護士さんで、検察官は50絡みのベテラン男性であった。被告人質問では、弁護人から、「執行猶予期間中でもバレなきゃいいやと思っていたんじゃないの。」とか、「前の時も反省してたじゃないの。」とか、まるで検察官のような鋭い突っ込みがされていた。が、確かに、前も同じことやってるわけで、今回は家族の情状証人もおらず(見放されているのだろう)、やるとすると反対尋問を先に潰しておくくらいしかないよなあ、あとは子供のこと出すくらいかなあ、でももう離婚してるかも、と思いつつ見ていた。

求刑は2年6月で、言い渡しは2月18日であった。傍聴人が沢山いるので即日判決にしてくれないかなあ、と期待していたが、さすがにそれはなかった。最後に裁判官は、家族が心配して傍聴に来てくれたと思ったのか、被告人に「後ろにご家族が来ていますか。」と聞き、被告人が振り返って怪しい一団をチラ見したのちに、「いいえ」と回答し、法廷内が虚しい空気に包まれた。と同時に、「じゃ、あの人たちなんなのさ。」という裁判官の心の声も聞こえたのだった。

法廷から出て、「脅された仲間も窃盗罪で捕まったのかね。気になるね。」等感想を述べあっていたところで、新潟から応援に駆け付けてくれた丸山央氏と合流し、弁護士会の長岡相談所に向かった。まだ少しあるが、5時に長岡在住の弁護士さんが3人来てくれて、お話をしてくれることになっているのだ。相談所は3階建の結構立派な建物で、受付女性に来意を告げたところ、所内を親切に案内してくれた。1階には30人規模の会議も出来そうな大部屋(テレビ会議システムあり)と、相談スペースが一つあった。「できれば2階と3階も見せて欲しい。」と言ったところ、「1階だけなんです…。」とのことだった。そういえば上階は司法書士事務所であった。しかし、弁護士会の相談所の上が司法書士事務所とはいかがなものかナ…。

受付女性2人から、ここぞとばかりに情報収集したところ、「付近に飲食店はない。裏手にセブンイレブンがあるだけである。裁判所を含め職員は皆弁当持ちである。」「出入りの弁当業者もいて、たぶん400円くらいじゃないだろうか。」「切手や印紙は、すぐ近くに郵便局があるのでそこで買って貰っている。」「長岡の先生方は皆車で移動するので、裁判所の周りにはそれほど多くの事務所はない。」ということであった。

「それじゃ、少し時間があるので、近くを探検してみるか。」ということになり、再訪することを告げて外に出た。裁判所の横には、長岡市民の娯楽と芸術の殿堂、長岡市立劇場があった。築40年以上だが、いまでも十分立派な建物で、私はここでピンクレディーのコンサートを見たことを思い出した。確か、「波乗りパイレーツ」の頃だったから、やっぱりスターは落ち目になるまで来てくれなかったのだ。その向かいには、「無雪宣言都市長岡」という、一見して無茶と分かる標語が立っており、標語の横に人の背丈より高い雪が積んであったのが印象的だった。

その奥には、弁護士、司法書士、会計士、税理士などの士業を集めた「パートナーズPLAZA」があったので、受付嬢に頼んで、ちょっとだけ見学させてもらった。丸山氏によれば、ここに入っている、「高野・星野法律事務所」は、長岡では割と大手の事務所であるとのことであった。その後、付近住民の飲食事情を一手に担うセブンイレブンを一瞥したが、特に長岡限定というようなものはなかったため、丸山氏が「なぜか他県では売っていない。」と言う、亀田の「サラダホープ」というおせんべいだけ購入した。その後、セブンイレブン裏の郵便局前を「へー、ここかー」と言いながら通って、相談所まで帰って来たが、見たところ、法律事務所は周辺に7〜8件あるようであった。それにしても飲食店がどこにもないのは驚きで、「ここに、『周ちゃんラーメン』とか、『シウシウデリ』とか作ったら、絶対ウハウハだよな。」と言い合ったのだった。が、実際にないんだから、きっと儲からない理由があるのだろう。

相談所に戻ると、既に、星野徹氏、片沼貴志氏、黒田隆史氏の長岡三弁護士と、新潟から応援で寺尾昌樹弁護士が来て下さっていた。こんなユルユル企画のために本当にすんません。お土産は一つしか買って来なかったので困ったが、星野氏に「さっき先生の事務所見たんで差し上げます。」などと意味不明なことを言って、かりんとうを渡し、その後、レコーダーを回しながら、お三方より長岡の弁護士生活についてお話を聞いた。

まず会員数であるが、弁護士会としては長岡支部がないため、正確には分からないものの、長岡支部管内で活動している弁護士さんは33名程度で、大体皆の顔と名前も一致するということであった。もっとも、星野氏が来た10年前には20名前後だったので、割合的にはかなり増えてはいるが、若手もみんなイソ弁で就職でき、仕事に困るようなこともなく、仲良くやっているとのことであった。

また、管内の人口は漸減傾向ながら61万人と、かなり多いのだが、管内が広大で、人口も薄く広く分布しているため、結局は長岡近辺に仕事が集中してしまうということであった。そういえば、長岡市は、平成の大合併で次々と周りの市町村を飲みこみ、以前は17万人だったのが、現在は28万人、広さで言えば東京23区全域よりもずっと広く、なんと佐渡島よりも広い巨大都市になってしまった。新潟県弁護士会では、県内の弁護士が増えている状況も踏まえ、平成24年に、支部の充実と復活を求める決議がなされ、長岡支部管内では南魚沼と十日町と柏崎に裁判所支部を設置するよう働きかけているとのことであった。

このように、とにかく管内が広く、どこに行くにも車でしか行けないので、例えば遠い十日町簡裁であっても、小千谷から下道を通って片道1時間ちょい位で行き来しているということであった。移動は常に車であるから、必ずしも裁判所の周りに事務所がある必要はなく、食事も車でどこでも寄れるため、裁判所周りになくても一向に不便しないとのことで、「周ちゃんラーメン計画」はあえなくボツとなった。

事件の内容は、特に地域性があるわけではなく、みな民事刑事全般を扱っているということであったが、依頼人も車で来る人が殆どで、近所だと身元がすぐに割れてしまうため、わざわざ遠くの弁護士さんのところに行って頼む人も多いということであった。事件の割合は、殆どが長岡支部で、それ以外は新潟本庁がほんの少し混じるだけ、割合は5%もない、ただ三条支部の弁護士さんは、おそらく長岡や新潟本庁も掛け持ちしているのではないかとのことであった。

雪については、近年は2mを超えるような豪雪はなくなったものの、2年前には170cmまで積もった時があり、弁護士も裁判所も毎日雪かきに追われて裁判どころではなく、しばらく期日が延期になったとのことである。ただ、十日町簡裁などはもっと豪雪のはずだが、よほどのことがない限り、ちゃんと車でたどり着くし、裁判もやっているということであった。雪が多く降るなら降るで、それに合わせた対策があるのだろう。

と、この辺りまでお話を聞いたところで、井上隊員が甲府に帰る時間があるので、本日の宴会場「桜亭」に移動して、お酒を飲みながらお話しすることとした。相談所の受付女性は既に帰ってしまっており、「一体誰が戸締りすんだ?」と思ったら、片沼氏が「私が鍵を預かっております。」ということであった。あはは、こういうのはローカルでとってもいいスよ。

桜亭は、名前からして赤い看板出した居酒屋なのかと思っていたら、東京でも滅多に見ないクラスの大変な高級割烹であった。重厚な店構えだが、出来たのは5年前くらいだそうだ。阿曽山氏は、「御前会議でも始まるのか。生まれてからこんなとこで飯食ったことない。」と驚いていた。料理も本格的で、山海の珍味が並び、どれもこれも美味しかった。特に、めかぶ(なのか?)の雑炊が美味しくて驚いた。そういえば今は寺泊も合併してしまったので、海のある市になったんだなあ、と感慨深くなった。メンバー構成は、紅一点どころか黒一色だったが、関東組、長岡組、新潟組が入り乱れて酒を飲みつつワイワイおしゃべりし、今となっては、大変楽しかったことと、お酒が大変美味しかったことしか覚えていない。大変すんません。唯一覚えているのは、地元のB級グルメ「イタリアン」(ソース焼きそばの上にナポリソースをかけたもの。「ム、これは合う!」とか全くなく、見たまんまの味がします)は、ずっと新潟の「ミカヅキのイタリアン」だと思っていたのだが、実は県を二分するライバルがいて、長岡を含む中越地区では「フレンドのイタリアン」であり、ミカヅキのものよりも麺が細く繊細な味なのだ、ということであった。丸山氏と黒田氏が各市を代表して熱く討論していたが、イタリアンは県民であった私でも「特に美味いものではないナ」と思っていたくらいで、他県民から見たらどっちでもいい話だろうな、だけどやはり県民のソウルフードには誰しも一家言あるのだな、と思いながら聞いていた。

楽しい時間もつかの間、こうしている間に山梨の井上隊員のリミットが迫り、デザートもそこそこにお店を飛び出すこととなった。桜亭は大変な高級割烹かと思ったが、お一人様1万円弱くらいであった。よいお店を紹介して貰った。機会があったら再訪してみたい。外に出て、玄関のとこに置いておいた温度計を見てみると、マイナス4度になっており、やっぱり北国だ、ずいぶん寒いのだなあと思った。でも、軽装備の三隊員に聞いてみると、「寒い事は寒いが、すぐ車内だし何とか大丈夫」ということで、重装備の大輔隊員は「へっちゃら、至極快適」だそうで、過剰装備の隊長は「着込み過ぎて暑いんだか寒いんだか分からん」という感じであった。半日いて、隊員が気候に順応しつつあるのかも知れない。

本当に時間がなかったので、長岡と新潟の皆さんへの挨拶もそこそこに、急ぎ足で駅まで行き、切符を見せてホームに上がると滑り込みセーフ、まさに新幹線が来たところであった。長岡は上越新幹線の中核駅の一つだと思うが、この夕方以降の時間は1時間に1本くらいしかないのが意外であった。2階の自由席に行き、シートを向い合せにして、「6人だと丁度いいね。もうちょっとお酒が欲しいね。」と言っていたところ、「ん? 一人足りないぞ。…あ、大輔がいない! 大輔どこ行った?」ということになった。

大輔隊員と連絡がついたのは湯沢の少し手前であった。長岡でお土産買おうとしたら、レジのお姉さんがもたもたして時間を食い、慌てて駆け上ったが隊員たちを乗せた新幹線は既に出たところであった、というようなことを情けない声でボソボソ話していた。彼はその後、1時間、寒くて無人の長岡駅ホームでポツネンと待ったそうである。一同、「これも広い意味では遭難と言えるかも知れないな、可哀想だから今日のMVPは大輔だな。」と言いながら、亀田のサラダホープをツマミに、さらに酒を飲んだのだった。サラダホープは普通に美味しいが、これといって特徴もないアラレ型のサラダせんべいで、県外で売っていない理由は見当もつかなかった。ピーナツちょっと入ってるといいのにね、あとつまみにするならマヨも欲しいな、と思わせるあたりが理由なのだろうか。前者は柿の種のを流用すればたちまち解決するわけだから、多分違うのだろう。

新幹線内では、次回訪問先の協議もなされ、結局決まらなかったのだが、「八丈島の前科があるし、いずれにしても事前に告知するのは控えよう。」ということになった。隊長は、「灼熱、豪雪と来たので、今度はどこかポカポカとした、温泉のあるところがいいなあ。」と思いつつ、深い眠りに落ちて行ったのだった。

【完 】

 

-補足- 

この日は東京も雪だったが、井上隊員も大輔隊員もその日の内に無事に帰宅できたという事である。西岡隊員は帰りの切符をなくすというハプニングを起こしたが、他の隊員が「確かに一緒に乗りました!」と赤い顔で擁護し、無事にお咎めなしで改札を抜けることができた。

それにしても、今回の支部探検も大変に充実した楽しいものとなった。お忙しい中歓待してくれた、長岡の星野徹、黒田隆史、片沼貴志、新潟の丸山央、寺尾昌樹の各先生方、大変ありがとうございました。

 

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