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コラム・弁護士

 
   

官僚裁判官よ! 驕るなかれ
―「国賠」のすすめ

後藤 富士子

2014年12月

弁護士 ・ 後藤 富士子

1.「ウソみたいなホントの話」のその後

昨年12月に書いた<官僚裁判官に見る「イエルサレムのアイヒマン」>で紹介した関西家裁支部の事件は、その後、妻から離婚訴訟が提起されただけで、確定した裁判はそのままである。パパの許に居る長男は、本案審判と保全処分で「ママに引渡せ」とされたが、保全執行でママの方へ行くのを拒否したため、「執行不能」になった。するとママは人身保護請求を申立て、パパは10日間拘置所に勾留されたうえ、認容判決言渡しとともに釈放された。パパが勾留中に、引渡の確定審判につき「1日3万円」の間接強制決定により賃金差押えが行われた。差押えにより月額6〜8万円が債権者であるママに会社から支払われているが、「1日3万円」で計算すると既に2000万円にもなる。

先日、この話を知った読者から「その後、どうなりましたか?」という問い合わせを受けた。しかし、ご覧のように、「どうにもならないまま」である。

2. そうだ!「国賠」をやろう

民法818条3項は、「親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。」と定め、親権の効力として、監護および教育の権利義務(820条)、居所の指定(821条)を定めている。そうすると、パパからママへ引渡しを命じた裁判官は、明らかに法律違反をしている。そのうえ更に法外な間接強制で違法な引渡命令に従わせようなんて、絶対君主の暴虐に等しい。また、パパが長男を監護していることを「違法な拘束」だなんて冗談みたいなことを言って人身保護命令を発し、審問期日に長男を連れてこなかったからと勾留した裁判官らは、二重に狂っている。

このように思いあがった裁判官の法律違反でも、その手続内で「確定」し、その裁判を覆すことはできなくなっている。しかし、日本国憲法では「司法権の優越」が定められ、裁判官の任期が10年とされていることに照らせば、絶対君主みたいなことを裁判官ができるはずがない。当事者は、こういう暴虐に抵抗し、そこから解放される道があるはずである。私自身、4〜5年前、人身保護請求事件の確定裁判について国賠訴訟をやったことがあったが、全く相手にされなかった。それほどキャリア裁判官は「マニュアル」思考で、自分で考える能力を失っているのである。

3.人身保護命令と官僚裁判官

昭和23年に制定・施行された「人身保護法」は、憲法34条後段「何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。」という、英米の人身保護法を想起させる規定に基づくもので、人身保護令状についての詳細な手続法である。

英米の人身保護法は、人身保護令状(writ  of  habeas  corpus )を中心として発達したものである。 habeasは haveを意味し、corpusはbodyを意味するもので、habeas  corpusはyou  have  the  body、すなわち「被拘束者の身柄を差出せ」との意味を有する。そして、人身保護令状は、他人を拘束した者に対し、令状を発する裁判所又は裁判官が被拘束者の利益のために考慮するいかなる事項をも実行し、服従し、受忍させるために、被拘束者の身柄を一定の日時、場所に、逮捕拘禁の月日及び事由を添えて、出頭させることを命ずる令状である。それは、法律中において最も有名な令状であり、幾世紀の間、個人の自由に対する違法な侵害を排除するために採用されて来たので、しばしば「自由の大令状」と称される。そして、人身保護命令に従わない場合の制裁は、裁判所侮辱罪で対処される。

これに対し、日本の人身保護法では、拘束者が人身保護命令に従わないときは、「勾引し又は命令に従うまで勾留すること並びに遅延1日について500円以下の割合をもって過料に処することができる」(同18条)とされている。これは、官僚裁判官制度の日本では、裁判所侮辱罪の制度ができるまで、やむなく刑事訴訟法の被告人の勾引・勾留を準用したのであるが、未だに裁判所侮辱罪の制度は影も形もない。

しかし、裁判所侮辱罪という制裁権を付与されない裁判官が人身保護命令を発するなんて、英米法の国では理解できないのではなかろうか。日本では、人身保護命令が本来の意味するところに従って使われるのは皆無である一方、専ら父母間における子の身柄争奪紛争に濫用されているのである。

4.裁判と国家賠償法の適用

裁判については、そもそも国家賠償法が適用されないのではないかという議論がある。英米法の国では、裁判官の民事責任については司法免責特権という考え方があり、また、ドイツでも裁判官の義務違反が犯罪になる場合に限って損害賠償が認められているといわれている。これに対し、日本の国家賠償法1条1項は「公務員」から裁判官を除いていないし、裁判行為が「公権力の行使」に当たることは異論がないことから、裁判官の行為であっても、適用を除外していないと解されている。

ところが、判例では、裁判の誤りが国家賠償法で違法とされるのはどのような場合かについて、裁判官が優遇されている。民事訴訟で裁判官が法律の適用を誤った(民事留置権と商事留置権の取り違え)という事案で、昭和57年の最高裁判決は、違法とされる基準を次のように示した。「裁判官がした争訟の裁判に上訴等の訴訟上の救済方法によって是正されるべき瑕疵が存在したとしても、これによって当然に国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任の問題が生ずるわけのものではなく、右責任が肯定されるためには、当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情があることを必要とすると解するのが相当である。」として、当該事案は「特別の事情」に当たるものではないと判断している。つまり、無能なために違法であることを認識しなかった場合は、賠償責任がないというのである。

しかるに、裁判所構内での接見の際に、弁護人が被疑者に交付する文書の授受を裁判官により拒否された事案で、平成15年の名古屋地裁判決は、当該裁判官の行為を国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為にあたると判示した。刑事訴訟法81条による接見等の禁止の効力は弁護人には及ばないのに、担当裁判官が、その効力が及ぶと誤解しており、弁護士が法律解釈の誤りを指摘して何度も裁判官に再検討を求めたのに、条文の確認もしなかったというのである。判決は、当該裁判官の誤解を「裁判官としてあってはならないともいうべき基本的な法律の適用の誤り」とし、前記最高裁判決の基準を適用したうえで、違法であったと判断している。

5.「官僚裁判官」は、日本国憲法の「裁判官」と違うのでは?

こうして見ると、日本の官僚裁判官は、人身保護命令を発するには相応しくない一方、国家賠償法で自らの無能の尻拭いをしてもらう情けない裁判官だというのが分かる。

日本のキャリア裁判官は、裁判所という組織やキャリアシステムを維持することに汲々としており、そのために個々の裁判や当事者の人生を犠牲にして憚らない。私自身、判決文や法廷でのやり取りの中で、そのような裁判官の自意識を日々痛感している。

 

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