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コラム・弁護士

 
   

民法と戸籍制度

後藤 富士子

2021年11月

弁護士 ・ 後藤 富士子

■1

民法では、婚姻の成立のためには、戸籍法の定めに従って婚姻届出をしなければならないが(739条)、届出だけでは成立しない。その届出が受理されて初めて成立するが、法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ受理されない(740条)。つまり、民法で許される婚姻か否かをチエックするのが婚姻の届出・受理制度であり、ここで戸籍制度にスライドしていく。

ところで、結婚する際には夫または妻の氏を称するとされ、夫婦同氏が強制されている(750条)。また、戦後の戸籍制度は、「夫婦と子」という核家族単位の「同氏同籍」で編製される(戸籍法6条)。「婚姻届」の用紙をみると、(4)として「婚姻後の夫婦の氏・新しい本籍」の欄は、「夫の氏」「妻の氏」のどちらかに「レ印」をする。そして、「新本籍」については、(印をした氏の人がすでに戸籍の筆頭者となっているときは書かないでください)という注意書がある。このような届出様式によって、戸籍制度は組み立てられている。だから、夫婦別姓では、そもそも戸籍仕様の「婚姻届」の用紙を用いることさえできないし、受理されることもない。

一方、憲法24条1項は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し・・」と規定している。婚姻が法的制度である以上、「合意」の存在が何らかの方法で確認されなければならないことは否定できないが、それを超える要件を加重することは違憲ではないか。「夫婦同氏」でなければ婚姻届出が受理されないという側面だけをみれば、「合意のみに基いて成立」するという憲法24条1項の問題に他ならない。

■2

離婚についても、婚姻と同じように、「届出と受理」という戸籍制度の問題に還元される(民法764条、765条)。この届出で重要なのは単独親権者指定(819条)であり、これがされていないと受理されない。裁判上の離婚の場合、裁判所が単独親権者を定める。なお、父母が婚姻中は、原則として「父母の共同親権」である(818条3項)。

戸籍についてみると、父母が婚姻中は、「夫婦と子」という核家族全員が「同氏同籍」の戸籍である。しかし、父母が離婚すると、父母の戸籍が別々になり、子は父母のどちらかと同じ氏の戸籍に入る。必ずしも単独親権者となった親の戸籍に入るわけではなく、あくまで「氏の同一」が基本である。子が親権に服するのは未成年である間に限られているし、子が成人すれば戸籍筆頭者として単独戸籍を作れる。すなわち、離婚による単独親権制は、「夫婦別姓」に比べれば、戸籍制度上の障壁ははるかに低い。

一方、憲法24条2項は「離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」と規定している。単独親権者指定がされていないと離婚の届出は受理されない、というのは、「離婚の自由」か「親権喪失」かを迫るものであり、どちらにしても「個人の尊厳」を脅かす。のみならず、父か母かの択一以外に選択肢がないのだから、「両性の本質的平等」にも違反する。

■3

婚姻に際し、96%の妻が氏を変更しているという。また、2020年司法統計によれば、裁判所が母を親権者に指定する割合が94%という。これは、「選択的夫婦別姓」だけが「ジェンダー問題」なのではなく、「単独親権制」もまた「ジェンダー問題」であることを示している。 

そうすると、2つの問題をセットで取り組む必要があると思われる。婚姻は、「夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」のであり(憲法24条1項)、また、婚姻も離婚も、「法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」(同条2項)。

法制度に「原則」と「例外」はつきものである。その意味で、制度設計において、「夫婦別姓」を原則とし、「選択的夫婦同姓」を例外とする方が憲法24条に適合しているのではないか。また、「共同親権」を原則として「単独親権」を例外とするのも同様である。「アイデンティティー」を声高に叫ぶのではなく、憲法24条の理念を現実のものにする法制度の設計を期待してやまない。

 

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