夫婦別姓と婚外子差別 |
後藤 富士子 |
2009年12月 |
この夏の総選挙で政権交代した内閣で、法務大臣は千葉景子弁護士、男女共同参画など内閣府特命担当大臣が福島みずほ弁護士である。これに勢いを得て、夫婦別姓や婚外子差別解消の民法改正論議が盛況?である。 しかし・・である。夫婦別姓と婚外子差別は、「法律婚」という枠組みでみたとき、同根ではないか?と私の本能が警告している。
婚外子の相続分差別規定(民法第900条4号)を合憲とした平成7年の最高裁大法廷判決の論理は「法律婚を保護するための合理的差別」というのである。しかし、「正妻」に子がない(つまり嫡出子がいない)場合には、妻の相続分が増えるわけでもなく、また、婚外子の相続分にも差別はないから、「法律婚」が保護されるわけではない。一方、母の遺産相続についてみると、「法律婚を保護する」ことは、全く合理性をもたない。 すなわち、「法律婚を保護する」という論理には実体が伴わないのである。
ところで、「夫婦別姓」についてみれば、事実婚なら別姓はあたりまえである。だから、別姓にしたければ、事実婚でいけばいい。夫婦別姓を実践する福島大臣も事実婚である。これほど簡単に、夫婦の意思だけで実現できるのに、なぜ事実婚にしないのか?というと、事実婚では、婚外子差別など「法律婚の保護」が得られないからだという。 な〜んだ、国家のお墨付きをもらって法的保護を得たいのか(シラケル)。 法律婚の枠内に収まりたい夫婦別姓は、「両家墓」を想起させる。かつて、墓は家名とともにあったが、嫁いだ娘しかいない家系で墓を継承するのが困難になったため、夫婦の「両家墓」が認められるようになった。翻って、夫婦別姓といったって、夫婦各自の姓も父または母の「家名」じゃないか。自分の生まれた「家名」を維持したいなら、事実婚でどうぞ。
「法律婚の保護」を得るための夫婦別姓が、どうして「法律婚の外」に生まれた婚外子の差別を解消することと並列的に考えられるのか、私には理解できない。 『パリの女は産んでいる』(中島さおり著)によれば、フランスでは「事実婚」カップルが多いせいで、新生児の45%、第一子の56%が婚外子という。だから、フランスには「未婚の母」や婚外子の差別がないのである。これにひきかえ、日本では2002年の数値で婚外子は新生児の僅か1.9%(2%足らず)! というわけで、婚外子差別をなくすために、自立した自由な女性たちは、「法律婚の保護」など求めずに、是非とも事実婚を実践していただきたい。 |