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コラム・弁護士

 
   

わたくしとハゲ
(ハードボイルド編その3)

鈴木 周

2014年1月

弁護士 ・ 鈴木 周

ある朝、オレは鏡を見て、「…ハゲた…。」つぶやいた。

普通、ハードボイルドでは、逃亡生活等でやつれ果て、「こ、これがオレの顔か…。」などとつぶやくものだが、本編は全くバイオレンス性がないので、「ハゲた…。」とつぶやいてもおかしくはないのだ。

オレはそれまで市販薬のリアップを愛用していた。しかし、どうもオレには効果が怪しいようだ。このままでは本当に「ハゲのヒゲマッチョ」という、若い頃に想像していた中年のオレ(福山雅治氏のような人物)から、最も遠いところに辿り着いてしまう。

オレは、テレビCMで爆笑問題が盛んに「医者に行け、AGAをやれ。」と言っていたのを思い出し、事務所のパソコンで、「アガ、アガ」と検索したが全く反応がなく、しばらくアガアガ言った末、「あ、エージーエーだったのか…。」とようやく気づき、宣伝のサイトに辿りついた。

それにより、AGAとは、なにか治療を施すとかそういうことではなく、AGAをやっている医者のところに行くと、「プロペシア」という薬剤を貰え、これが本当に魔法のように毛を生えさせるらしい、ということが分かった。

早速、事務所近くのクリニックを検索すると、すぐに、「小滝橋メンズクリニック」(決して似ていません)がヒットしたので、早速電話して予約を取ろうとしたら、「予約なんて要らないのですぐ来い。」ということだったので、そんなことで大丈夫だろうか、と不安にはなったものの、秘書どもに「ちょっと出てくる」と言い残し、寒風の中、事務所を出た。

小滝橋メンズクリニックは、西新宿の某所の雑居ビルの最上階に入っていた。結構くたびれた感じのビルで、ビル全体が怪しい雰囲気満点だったが、思い切ってエレベーターに乗り込んだところ、もう一人、オレと同年配の、やや頭髪のたそがれた紳士が乗り込んで来た。行先は一緒だろうと思い、最上階のボタンを押したところ、紳士からも、「ウム」等と同意を得、お互い押し黙ったまま階の表示を眺めていた。

しばらくして最上階につき、エレベーターのドアが開いたので、オレは「どうぞ」と紳士を先に出した。本編はバイオレンスではないので、エレベーター内で紳士が突如ナイフを抜いて、乱闘になったりはしないのだ。エレベーター脇には、ドアがあり、「小滝橋メンズクリニック」との看板が出ていたので、オレは紳士のあとに続いて受付に向かった。

紳士は、すでに診察券を持っており、「〇〇を〇〇錠」等と申し述べ、お金だけ払ってソソクサと出て行った。どうも、このクリニックは、一度診察を受けてしまえば、その後は、診察券だけで薬の処方をするようだ。

オレは、ややオカマしい受付男性に向かって来意を告げたところ、「ウチはね、お薬は2つ出しているのね。どちらにするの?」と言うので(実際には違うがオレのイメージとしてはこんな感じだった)、壁に貼ってあった薬のリストを見ると、「プロペシア」と「バイアグラ」と書いてあった。あわてて「プ、プロペシアをお願いします!」と述べたところ、オカマしい受付男性は、「それじゃ、今日は初めてだから診察して行ってね。」とウィンクしながら言った(ような気がした)。

その日、ドクターは2名おり、1名は「井上医師」(仮名)で、もう1名は、「Dr.G」であった(本当。以下、「ドクターG」と書く)。一瞬見間違いかと思って確かめたら、やはり「ドクターG」と書いてあった。しかし、怪しげなものに惹かれる人間の性であろうか、オレはどういうわけか「せ、せっかくだからドクターGでお願いします。」などと答えてしまったのだった。

ドクターGは、映画監督の山本晋也氏にちょっと似た感じで、あろうことか本人もやや頭髪が心許ない状況にあった。もしかしたら、来院者に安心して貰う趣旨かも知れないが、よく考えると逆効果ではないだろうか。

オレはてっきり、ドクターGが「はいちょっと頭下げて。」などと言いつつ、ハゲの状況や頭皮の脂分などを診察するのかと思っていたが、ドクターGの第一声は、「ウチのクリニック、何で知ったの?」というもので、腰が抜けそうになった。オレが、「ネットです。」と答えると、「ヤフー、グーグルどっち?」というので、「グーグルですが。」と言うと、続けて「検索語は何?」と言われたので、「たしか、『ハゲ、西新宿、AGA』です。」と述べたところ、ドクターGは、フンフンと手元の用紙にメモを入れていた。どうも、販促のために、最初の診察時にドクターが情報収集することになっているようだ。

ドクターGはメモを取り終え、「はい、じゃ、これでいいよ。」と言うので、「ヘ?」と言ったところ、「薬買って帰っていいよ。45錠が○○円、90錠はちょっとお得になって、〇〇円だよ。」ということであった。ドクターが薬の割引まで宣伝するとは驚きの展開であった。どうも、診察とは名ばかりで、処方のために形だけやっているのかも知れない。

オレは受付に戻り、「最初だから45錠下さい。」と言って、45錠のボトルを買い、診察券を貰って帰ったのだった。

 

あの日から、丸3年が経過した。プロペシアは確かに本物であった。一時、落城寸前だったオレの前髪前線が、今はすっかり強固な石組みとなり、足軽隊も勢揃いして賑々しくなった。

が、プロペシアは魔法の薬であるとともに、使用をやめると即ハゲる、という残酷な薬でもあるのだ。オレは、3年にわたり小滝橋メンズクリニックで、お得な90錠2万4000円のボトルを買い続けている。結構な出費だ。向うにしてみれば、「飼い続けている」、ということになるのだろう。

それにしてもドクターGはどうしているだろうか。元気にしているだろうか。今でもとても気になるオレだ。

 

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